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【歯科】

口の中の皮がむける(上顎・口腔粘膜剥離)の原因と治し方

口の中の皮がむける原因と対処法

 

疲労や睡眠不足、ストレスや不規則な生活などで体調が優れないときに、お口の中の「歯」以外にも不調のサインが現れたりします。

体調のすぐれないときに出る口内炎以外にも、よく見られる症状として歯ぐきの赤みや腫れ(じんじんするような痛みを伴ったりします)、唇の裏や頬の粘膜の皮が白っぽく剥ける、歯全体の知覚過敏、などがあります。

「朝起きると、なんだか口の中がザラザラする…」「上顎の皮がペロッと剥けて、ヒリヒリして気になる」

こんな経験はありませんか? 口の中の粘膜は非常にデリケートなため、ちょっとしたことで皮が剥けてしまうことがあります。多くは一時的なものですが、頻繁に繰り返したり、痛みを伴ったりすると、食事や会話も憂鬱になってしまいますよね。

女性の場合はホルモンバランスが影響することも多く、生理前や生理中、妊娠や授乳中にそのような症状がよく出ます。体だけでなくお口の中も影響を受けて変化しやすいように感じます。

この記事では、口の中の皮が剥けてしまう主な原因から、ご自身でできる対処法、そして気になる上顎の皮むけに特有の理由まで、詳しく解説していきます。不快な症状を改善し、健康なお口を取り戻すためのヒントを記載しましたので、ぜひ最後までご覧ください。


なぜ?口の中の皮がむける主な原因

口の中の粘膜が“皮むけ(剥離・剥がれ)”を起こす原因は、単一ではなく複数の因子が絡み合っていることが多いです。以下にそれぞれ詳しく説明します。

1. 物理的な刺激・火傷

最も身近な原因の一つが、物理的な刺激です。

♦熱い食べ物・飲み物による火傷:例えばスープ、コーヒー、たこ焼き、ピザなどが上顎や頬の内側に触れ、数日後に粘膜が白くふやけて剥がれ落ちることがあります。

♦硬い食べ物の摩擦:せんべい、フランスパン、ポテトチップスなど硬さ・エッジのある食品が粘膜を擦ることで傷つけ、皮が剥ける原因に。

♦歯磨きの過剰な力:歯をきれいにしたいという意識から、硬めのブラシや強い力でゴシゴシ磨くと、歯ぐきだけでなく頬の内側、上顎の粘膜まで傷つけてしまうことがあります。

♦合わない入れ歯・矯正器具・マウスピース:サイズが合っていなかったり、装着後の調整が不十分だったりする器具が粘膜にずっと当たっていると、慢性的な刺激・炎症を起こし、皮がむける原因となります。

こうした刺激による剥脱は、臨床的には“剥がれた表層を押すと正常な粘膜が露出する”という特徴があります。

2. 化学的な刺激(歯磨き粉・洗口液)

日常に使っている口腔ケア用品が原因になることがあります。

♦代表例として、歯磨き粉に含まれる ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)。1996年の研究では、SLS含有歯磨剤を上顎の粘膜に適用したところ、非SLS製剤群と比べて口腔粘膜の剥離(desquamation)発生頻度が有意に高かったという報告があります。PubMed

♦洗口液(マウスウォッシュ)で、アルコール濃度が高いもの、強力な香味成分・発泡性成分を含むものでは、粘膜の水分を奪い乾燥・刺激を助長することがあります。

つまり、普段無意識に使っている「歯磨き粉」や「洗口剤」が“原因”になっている場合もあるのです。個人的には、洗口剤はアルコール成分のないものを使用することをおすすめします。歯周病菌除菌を謳っているアルコール成分の入ったマウスウォッシュは口の中が「パキパキ」になってしまうので日常的に使用するのは避けた方が良いです。

3. 口腔内の乾燥(ドライマウス)

粘膜を守る唾液が減少すると、粘膜剥離のリスクが高まります。

♦唾液には、潤滑作用・自浄作用・抗菌作用・粘膜保護作用があり、これの低下は“バリア機能の低下”を意味します。

♦口呼吸、エアコンの効いた室内、睡眠中の口開き、薬剤の副作用(抗ヒスタミン薬、高血圧治療薬、鎮痛剤等)などが唾液分泌を減少させます。

♦加齢に伴って唾液腺の機能が落ち、分泌量が減ることも知られています。
慢性的に湿度・唾液量が低い口内環境では、軽い刺激でも皮むけを起こしやすくなります。

4. 栄養不足・全身状態

粘膜の健康は、体の内側の栄養状態と密接に関係しています。

♦ビタミンB群(特にB2・B6)は粘膜の代謝・再生を助け、欠乏すると口内炎だけでなく、粘膜が荒れて皮が剥けやすくなります。

♦鉄分・亜鉛の不足も、粘膜が薄く弱くなるため、剥離リスクが高まります。

♦ストレスや睡眠不足、慢性疲労は免疫を低下させ、粘膜の再生能力が落ちます。これらは“お口の健康”にも直結します。

お口の中、特に粘膜はビタミン、ミネラルの不足により不調が起きやすい部分でもあります。当院では、そういった不調の改善のためにサプリメントを処方してお口の中だけでなく、内部からのフォローも行なっています。続けることで、体全体の免疫力も上がり不調も出にくくなります。

 

5. 上顎の皮がむける特有の理由

多くの患者さんが「上顎(口蓋)だけ皮がむける」という経験をされますが、それには医学的にも納得できる理由があります。

♦上顎(特に前部口蓋や前歯裏)は、熱い飲食物が最初に当たる部位であり、火傷リスクが高い箇所です。

♦同時に、舌や下顎の動きで“食べ物を上顎に押し付ける”癖のある方の場合、物理的摩擦刺激が集中します。

♦加えて、矯正装置・マウスピース・上顎義歯の辺縁がこの部位に当たることが多いため、慢性的な刺激が入りやすいのです。

♦女性ではホルモン変動(生理前・妊娠・授乳期)により粘膜が敏感化し、このような部位で症状が出やすい傾向があります。

6. その他・鑑別を要する疾患

長引く・広範囲・出血を伴う剥離には、次のような疾患も鑑別対象です。

♦口腔扁平苔癬白い網目状の病変+びらんを伴うことが多い

♦口腔カンジダ症白い膜状付着+剥がすと出血・ただれを伴うケースあり

♦接触性口内炎・金属アレルギー:義歯金属・合金からの反応

♦自己免疫性水疱症(例:天疱瘡)などの上皮剥離症

こうした背景がある場合、歯科・口腔外科・皮膚科・耳鼻科など専門的な検査が必要となります。

今すぐできる!口の中の皮むけの治し方と対処法

日常ケアとして、次のステップを意識して実践してみてください。

1)とにかく刺激を避ける

まずは“刺激を避ける”ことが最も有効です。

♦熱い・辛い・酸っぱい・硬い食べ物は、症状が治まるまでは控えましょう。

♦タバコ・アルコールも粘膜刺激を助長しますので控えめに。

♦歯磨きは、毛先の柔らかめ歯ブラシ+力を入れない軽い圧で行います。目安として、約200 g程度の圧(卵を割らない力)をおすすめしています。

♦歯磨き粉・洗口液の成分を見直す:特に “SLS不使用・低刺激ジェルタイプ” が症状改善に使われることがあります。

2)口の中をしっかり保湿する

乾燥が原因のひとつであるため、“潤いを保つ”ことは重要です。

♦こまめに水分補給を(特に寝起き・口が乾くと感じるとき)。利尿作用のあるカフェイン飲料は控えめに。

♦寝室の加湿、口呼吸の癖があれば鼻づまり対策を。

♦唾液分泌を促すために、唾液腺マッサージ(耳の下・顎の下を指で軽くマッサージ)も有効です。

♦市販の口腔保湿ジェル・スプレーの併用も検討してください。

3)栄養バランスを整える

粘膜の再生を助ける栄養素を積極的に摂取しましょう。

♦ビタミンB群(B2、B6): 納豆・卵・豚肉・乳製品

♦ビタミンA: にんじん・かぼちゃ・ほうれん草(粘膜保護)

♦ビタミンC: ピーマン・ブロッコリー・果物(コラーゲン生成・ストレス抵抗)

♦亜鉛: 牡蠣・牛肉・チーズ(細胞再生を助ける)

♦鉄分も含めたバランスの取れた食事を心がけてください。
サプリメントを用いるなら、あくまで「補助」として位置づけ、食事からの摂取を基本に。

4)十分な休養をとる

ストレス・疲労・睡眠不足は免疫力を低下させ、粘膜トラブルを誘発します。

♦1日7時間以上の睡眠を目標に。

♦軽い運動・入浴・ストレッチなどで自律神経を整える。

♦感情表現・発散できる時間を設け、慢性的なストレスを軽減。

5)サプリメントで必要な栄養素を摂取する

当院では、症状が繰り返される方に以下をおすすめすることがあります(ただし医薬品ではなく、あくまで補助的手段です)。

♦ビタミンC:粘膜・皮膚の炎症軽減、免疫力アップ

♦亜鉛:粘膜・味覚・爪・髪にも関わるミネラル

♦CoQ10:抗酸化・唾液腺機能アップの可能性(研究段階)
また、ニキビ・肌荒れ・疲労感を伴う方には、ビタミンB群を併用検討することもあります。女性では大豆イソフラボンを補うことでホルモン変動期のサポートにもつながることが臨床経験的にあります。

医療機関専売の高品質サプリメントをおすすめします。

まとめ

口の中の粘膜が“皮むけ”する(剥離する)という症状。実は、単なる口内炎・乾燥だけで起こるものではありません。物理的刺激・化学的刺激(特にSLSなど)・口腔乾燥・栄養状態・ホルモン変動など、複数の因子が重なって起きることが多いのです。
最新の文献では“Oral Mucosal Peeling(OMP)”という概念が整理され、特に歯磨剤成分(SLS)と粘膜剥離の関連性が科学的に支持されつつあります。PMC+1
私たち歯科医師としては、こうした症状を「軽く見過ごす」のではなく、「どの刺激が働いているか」を丁寧に探ることが重要です。

日常ケアを見直し、低刺激製品を選び、装置の適合を確認し、栄養・睡眠・ストレスにも目を向けることで、多くの場合、症状は改善します。特に「歯磨き粉を変えたら改善した」という症例も少なくありません。
しかし、2週間以上改善しない、範囲が広い、出血・潰瘍を伴う場合は、専門診査が必要です。早めの受診が、安全・確実な回復につながります。

 

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小川朗子

監修者

アンチエイジングデンタルクリニック恵比寿 小川 朗子(おがわ あきこ) 担当科目:一般歯科/専門治療 矯正歯科・点滴療法
1996年 鶴見大学歯学部卒業
1997年〜2006年 都内開業医勤務
2004年〜南青山デンタルクリニック副院長
2006年 アンチエイジングデンタルクリニック恵比寿開院
2007年 抗加齢医学会認定専門医取得
2015年 インビザライン認定医取得
2017年 高濃度ビタミンC点滴認定医取得
2018年 インディアナ州立大学歯学部 歯科矯正プログラム認定医取得
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